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6.2 (b)’ 外資規制:「参入前内国民待遇+ネガティブリスト方式」

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4.4では、外商投資の方向性の指導に関する規定と外商投資産業指導目録についてみた。

国際投資ルールの重要な発展方向は、投資の自由化である。これを達成する具体的な方法は、国民待遇の義務の適用範囲を、投資の参入後の段階(投資の管理、運営、販売およびその他の処分)から、投資の参入前の段階(投資の設立、取得、拡大)に拡大することである。これがいわゆる「参入前国民待遇+ネガティブリスト方式」である。

2013年以前は、中国は国際投資協定交渉において「参入前国民待遇」を与えることは承諾しておらず[1]、「参入後国民待遇」のみを定めていた。2013年7月の第5回米中戦略経済対話の際、米中双方は参入前国民待遇+ネガティブリストをベースに米中二国間投資協定の実質的な交渉を展開することで合意した。これは中国が国際投資ルールの制定に参与する際の立場の、重大な転換を示すものであった。

この転換は習近平政権のもとで、党中央、国務院が作り出した重大な戦略的方針であり、投資分野の改革開放をさらに推進することに資するものであり、中国の海外権益の保護を強化し、より積極的に国際投資ルールの制定に参画することにも役立つものであった[2]

2013年9月29日、中国は、中国(上海)自由貿易試験区(以下、「SPFTZ」という)の運用を開始したと発表した。投資開放圧力テストはまさにSPFTZの重要な内容の一つであった。2013年10月1日から、関連する外資規制関連法令の規定はSPFTZ内では3年間、すなわち2016年9月30日まで、施行を停止し、最初の対外貿易地区向けの外資参入ネガティブリストを同時に公布し実施した。

ネガティブリストは一見、指導目録に似ているが、ネガティブリストに含まれていない外商投資には事前承認が必要ない点で、外資規制の根本的な変更と言える。従来の、奨励類、許可類、制限類のいずれに属しているかには関係なく、事実上すべての外商投資プロジェクトに政府の事前承認が求められた、中国の他の地域における外商投資とは異なり、SPFTZでのプロジェクトは、簡単な届出に基づいて行うことができるようになった。つまり、プロジェクトがネガティブリストに記載されているカテゴリーのいずれにも属しない限り、政府が裁量を行使できる、事前承認のプロセスを経る必要はないのである[3]

2016年9月3日、全国人民代表大会常務委員会は外資規制関連法令の改正を決定し、元の外資三法の投資審査承認に関する条項を削除し、ネガティブリスト管理モデルを正式に全国に普及させることとした。このために商務部は「外商投資企業の設立および変更の届出管理暫定弁法」[外商投资企业设立及变更备案管理暂行办法](以下「暫定弁法」という)を公布し、2016年10月8日に公布実施した。この「暫定弁法」は外資がネガティブリスト以外の分野に参入する場合には、外商投資企業の設立および変更は届出管理を実行し、審査・承認を求めないと定める。「暫定弁法」が実施されたことにより、参入前国民待遇+ネガティブリストによる管理方式は初めて全国的に実施された。

その後、指導目録は2017年と2018年の2回修正され、第2回の修正後、2018年6月30日から全国で実施された。

2018年には、指導目録(2017年に改訂)の外商投資のネガティブリストが改訂され、「外商投資参入特別管理措置(ネガティブリスト)」として独自に発行された。

「外商投資参入特別管理措置(ネガティブリスト)」が独立して発行された後、指導目録は主として外商投資の奨励類の産業リストとなった。

その後、2018年に、指導目録と「中西部地区外国企業投資産業奨励産業目録」を「外商投資奨励産業目録」に統合する改訂作業が行われた。

奨励類の例は、「ソフトウェア製品の開発、生産」、「ベンチャー投資企業」、「知的財産権サービス」、「IoT技術の開発およびアプリケーション」など。

制限類の例は、「付加価値電信業務(電子商取引を除く)、基礎電信業務」、「市場調査」、「信用調査および格付けサービス会社」、「医療機関」など。

禁止類の例は、「社会調査」、「図書、新聞、定期刊行物の出版業務」、「音楽映像製品および電子出版物の出版、制作業務」、「ニュースサイト、ネットワーク出版サービス、インターネット接続サービス営業場所、インターネット文化営業(音楽を除く)」、「ゴルフ場、別荘の建設」など。

ネガティブリスト以外の外商投資は基本的に参入前国民待遇を受けていると言える。このことは外商投資法の円滑な立法のための基礎となった[4]

特に明確にしておく必要があるのは、外商投資に対して「参入前国民待遇+ネガティブリスト」の管理制度を実施しても、それは投資後の国民待遇を実行しないということを意味するわけではないということである。これは、中国の以前の立場と比べると、国民待遇義務の適用範囲を、投資後から参入前に拡大し、投資のライフサイクル全体(投資の設立、取得、拡大、管理、経営、運営、販売およびその他の処分を含む)をカバーすることを意味する[5]

👉3.4.2 4.4 9.1


[1] 「国際投資ルール/合意の4つの側面:国際貿易の分野と違って、国際投資の分野にはWTOの協定に似た多国間投資条約が余りない。国際投資ルールには断片的な、主として二国間投資協定で締結される特徴がある。国連貿易開発会議が2018年に発表した「世界投資報告」の統計によると、2017年末までに、各国は3322件の投資協定を締結した。そのうち、二国間投資協定(BIT)は2946ある。国際投資規則は締結の形式的としては断片的な特徴を示しているが、それらの議題と内容は一定の傾向を示している。一般的に、国際投資ルールは主に投資保護、投資参入、公平競争、紛争解決など四つの方面の内容を含む。」

(李)

[2] (李)

[3] (Mahony) 82-3

[4] (宋)参照

[5] (李) 参照

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